イベント

【終了】次世代モビリティ社会を考える夕べ 第7夜「移動の価値とモビリティの未来 (6)」

日時
2021年2月24日(水)18:00~20:00
場所
オンライン開催(Zoom ウェビナー)

CASEに代表される次世代モビリティ技術の発展・普及、スマートでレジリエントな都市デザイン、そしてそこで生活する人間。これらが織りなす「次世代モビリティ社会」はどうあるべきか?企業、行政、大学などの研究機関は、今後何をしなければならないか、毎回ひとつのテーマを取り上げて、モビリティ社会研究所のメンバーが、オンライン参加者とともに考えていきます。

主 催 名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所
後 援 一般社団法人 人間機械協奏技術コンソーシアム ヒューマンセントリックモビリティ委員会
参加費 無料

内容

社会的価値研究部門の久木田水生准教授が代表者を務める「未来社会創造プロジェクト:移動の価値とモビリティの未来」のセミナーシリーズ。今回は、人工神経接続による機能再建の研究をしている西村幸男先生(東京都医学総合研究所)と、歩行アシストロボットHALを使ったリハビリを実践している中島孝先生(新潟病院)を講師にお招きします。

18:00-18:05 趣旨説明

ファシリテーター
久木田 水生 社会的価値研究部門 准教授(情報学研究科 社会情報学専攻)


18:05-18:50 「人工神経接続による脳機能再建」

西村 幸男 先生(公益財団法人 東京都医学総合研究所・プロジェクトリーダー)

 脊髄損傷や脳梗塞などの神経損傷による四肢麻痺患者の願いは、“失った機能を取り戻したい”、それに尽きる。すなわち、自分の意思で自分の身体を思い通りに動かし、自分が何をしたかを感じ取れるように戻りたいのである。神経損傷による運動・体性感覚機能の消失は、大脳皮質と脊髄間を結ぶ神経経路が切断されてしまうことに起因するが、損傷の上位及び下位に位置する神経構造はその機能を失っているわけではない。本講演では、神経損傷後に残存した神経構造同士を、損傷領域を跨いでコンピューターインターフェイスを介して人工的に神経接続する“人工神経接続”により、失った四肢の随意制御の機能再建に成功した例を紹介する。人工神経接続は随意制御可能な生体信号(脳活動や筋活動)を記録し、それをリアルタイムに電気刺激へ変換し、物理的に離れた神経構造を電気刺激する、すなわち神経活動依存的電気刺激である。このパラダイムを用いて、麻痺した上肢の随意運動制御、知覚及び随意歩行機能の機能再建と機能再獲得による学習メカニズムについて議論する。

脳機能再建プロジェクト「脳脊髄損傷後の機能回復機序解明と機能再建法の開発」


18:50-19:35 「歩行運動学習装置としてのHAL医療用下肢タイプ開発における臨床戦略および実際」

中島 孝 先生(独立行政法人国立病院機構 新潟病院・院長/脳神経内科)

 歩行はバランス維持や安全に歩行するための機能なども含む高次脳機能を必要とする、人の随意的運動機能であるが、まず、下位の歩行運動中枢とその回復機構に関する議論が重要である。Barbeau (Brain Res 412: 84-95, 1987)らが、第13胸髄切断ネコでトレッドミル上で歩行訓練ができることを示した後、人の2足歩行の障害に対しても回復の可能性が示唆され、Wernig (Eur J Neurosci 7: 823-829, 1995)らにより脊髄損傷後のトレッドミルとハーネスによる運動療法が提唱された。Ramón y Cajal(1928)は成人の中枢神経系は一度傷害されると再生しないと結論づけたため、多くの専門医は脊髄を含む中枢神経系の傷害後の真の機能回復については懐疑的であった。現代において中枢神経系の可塑性を促進するメカニズムは徐々に解明されてきたが、依然として困難な領域と考えられている。中枢神経系には自らの自己同一性を保つために、改変を抑制するメカニズムが備えられ、人の中枢神経可塑性、神経系学習は極めて制限されたものとなっているからである。
 筑波大学の山海嘉之はサイバニクス(Cybernics)概念(Cybernics : fusion of human, machine and information systems. Tokyo: Springer; 2014.)を作りだし、装着型サイボーグ型ロボットHybrid Assistive Limb (HAL)を発明した。サイバニクスはサイバネティクスと異なり、デバイスと人の運動器(効果器)が一体となり、力学的および電気的に融合しようとする事により、効果器に対する装着者の運動意図をリアルタイムに逆解析し、装着者が意図した運動現象になるようにデバイスがアシストすると同時に、慣性モーメントや質量中心のずれを最少化しようとすることで、装着者は運動意図と運動現象のずれは自己固有受容器で知覚し、より正しい運動をしようとする。同時にデバイスのセンサーもそのずれを計測し、理想的運動パターンと運動現象のずれを補正する運動支援を行う。両者がずれを最小限にしようとすることで、装着者は最終的に運動学習ができると考えた。これは、【脳→脊髄→運動神経→筋骨格系→HAL】、【HAL→筋骨格系→感覚神経→脊髄→脳】という身体と HAL との間に起きるinteractive biofeedback (iBF)と呼ばれ、iBFはサイバニクスを使った神経可塑性の導入法、運動学習理論と言える。
 我々のグループはこのiBFによる神経可塑性導入法を無作為化比較対照試験(Randomised controlled trial)NCY-3001試験(神経筋8疾患などのの運動単位病変に対する試験)とNCY-2001試験(痙性対麻痺などの運動単位より上位の病変に対する試験)で検証した(日本内科学会雑誌2018, 107(8), https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/8/107_1507/_article/-char/ja/)。脊髄運動ニューロンや筋繊維を障害する神経筋8疾患において、HAL装着した歩行運動療法により、対照療法と比較して2分間歩行距離が有意に改善することが示された。今までのマカクザルの皮質脊髄路の傷害実験で間接路が使える様になるなどの研究に加え、HALのエビデンスとその後の臨床実績で、歩行運動や神経可塑性の研究が促進されつつある。それらの臨床評価方法として非侵襲的なfMRI、fNIRS、DTI 等の手法もためされている。
 希少性の神経筋疾患(脊髄性筋萎縮症や球脊髄性筋萎縮症)の運動機能改善のためには、アンチセンス核酸医薬などの疾患修飾薬とHALとの複合療法が重要であり、臨床事例を当日ビデオなどで紹介する。


19:35-20:00 質疑応答とディスカッション

申込方法

お申し込みは、こちら → 受付は終了しました。


ご参加にあたって


*視聴の方法については、お申込みいただいたメールアドレスにご案内します。
*カメラ・音声ともに「オフ」の状態で視聴していただきますので、お気軽にご参加ください。質問はチャットで受け付けます。
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 パソコンの場合、Webブラウザ(Google Chrome、Firefox、Chromium Edge推奨)からも視聴できますが、一部の機能が制限される場合があります。
*本ウェビナーをライブ視聴できるのは、事前に参加申し込みされた方のみとなります。他の方への視聴URLの転送はお控えください。
*本ウェビナーの録画・録音・撮影については、固くお断りいたします。

お問い合わせ先

国立大学法人 東海国立大学機構
名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所
E-mail:gremo_info[あっと]mirai.nagoya-u.ac.jp  [あっと]を@に変更してお問い合わせください。
電話:052-747-6390(平日 9:00-17:00)


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